【25種類早見表】契約書の保管期限を一覧で解説
公開日:2024/09/30
「電子取引が増えて、紙と電子の契約書が混在している。契約書の保管期限はそもそもいつまで?」
「契約書の保管期限を忘れたら、どんなペナルティがあるのだろうか?」
契約書の保管期限は、結論からお伝えすると下記のとおりです。
法律 | 保管期限 | 主な書類 |
---|---|---|
会社法 | 10年 |
・請負契約書 ・委託契約書 ・満期または解約となった契約書 ・帳簿 ・仕訳帳 ・総勘定元帳 |
法人税法、法人税法施行規則 | 7年 |
・受渡計算書 ・預かり証 ・売買報告書 ・領収書 ・預金通帳 ・借用書 |
労働基準法、労働基準法施行規則 | 5年 |
・雇用契約書 ・労働条件通知書 ・解雇通知書 ・賃金その他労働関係に関する重要な書類 |
その他 | 2年〜永久 |
・健康保険(2年) ・厚生年金保険(2年) ・雇用保険に関する書類(2年) ・効力存続中の契約書(永久) |
本記事では、上記も含め、代表的な契約書25の保管期限を全紹介します。
合わせて、保管しない場合の法的なリスクについても詳しく解説していきますので、ぜひ自社の業務にお役立てください。
最後までお読みになれば、それぞれの契約書の保管期限やペナルティへの不安が解消されるでしょう。
この記事が、あふれかえる契約書の保管期限を把握しきれずに不安を抱えていた、貴社の業務を見直すきっかけになれば幸いです。
1.【種類別】契約書の保管期限一覧
契約書の種類ごとに、保管期限をまとめた次の表をご覧ください。
契約書の種類 | 保管期限 | 起算日 | 法律 |
---|---|---|---|
・健康保険、厚生年金保険、雇用保険に関する書類 | 2年 | 完結の日、退職、解雇死亡の日 | 健康保険法施行規則34条 |
・賃貸借契約書 | 5年 | 賃料が発生する日 | 宅地建物取引業法施行規則第18条 |
・雇用契約書 | 5年 | 従業員の退職日または死亡日 | 労働基準法第109条 |
・労働条件通知書 ・解雇通知書 |
5年 | 労働者の退職または死亡の日 | 労働基準法施行規則56条 |
・賃金その他労働関係に関する重要な書類 | 5年 | 最後の記入をした日 | 労働基準法施行規則56条 |
・産業廃棄物処理の委託契約書 | 5年 | 契約終了日 | 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則8条の4の3 |
・受渡計算書 ・預かり証 ・売買報告書 |
7年 | 帳簿閉鎖日および書類作成日・受領日の属する事業年度終了の翌日から2か月を経過した日 |
法人税法施行規則59条 法人税法施行規則67条 |
・領収書 ・預金通帳 ・借用書 |
7年 | 帳簿閉鎖日および書類作成日・受領日の属する事業年度終了の翌日から2か月を経過した日 |
法人税法施行規則59条 法人税法施行規則67条 |
・請負契約書 ・委託契約書 |
10年 | 帳簿閉鎖の日 | 会社法432条 |
・帳簿 ・仕訳帳 ・総勘定元帳など |
10年(会社法) 7年(法人税法) |
その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から(法人税法) |
会社法432条 法人税法施行規則59条 法人税法施行規則67条 |
・製品の製造、加工、出荷、販売記録など | 10年 | 製品引渡日 | 製造物責任法5条、6条 |
・建設業の営業に関する完成図 ・打合せ記録 ・帳簿 ・契約書等 |
10年 | 当該建設工事の目的物の引渡しをした日 | 建設業法施行規則28条 |
・効力存続中の契約書 | 永久 | — | — |
・効力存続中の重要な権利に関する文書 | 永久 | — | — |
上記をみてお分かりのとおり、契約書の保管期限は種類や法律によって異なります。
ただし、仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿のように、1つの書類で2つの法律が該当するケースもあります。その場合は、保管期限が長い方に合わせる必要があるので、上記の表をしっかり確認してください。
2.契約書の保管期限と関係する主な法律
契約書の保管期限は、基本的に、下記の法律で定められた保管期限に従うことになります。
会社法 | 会社の取引に関わる契約書 | 10年 |
法人税法 | 会社の経理に関わる契約書 | 7年 |
労働基準法 | 人事や労務に関わる契約書 | 5年 |
契約書の保管期限を把握するうえで、上記の法律がどのようなものなのかを知っておきましょう。
2-1. 会社法:保管期限10年
概要 |
会社の設立、組織、運営、株主の権利義務などの法律関係を明確にするもの └契約書の保管は原則10年 |
---|---|
根拠法令 |
432条2項 株式会社は法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。 2 株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。 |
違反時の罰則 | 100万円以下の過料(会社法976条) |
会社法とは、会社の設立や運営など、経営に関わる法律関係を定めたものです。
簡単に言えば、会社の取引に関わる契約書全般については、会社法の下で管理しなければなりません。
該当する契約書の種類は、次の通りです。
【該当する書類】- ・請負契約書
- ・委託契約書
- ・取引基本契約書
- ・売買契約書
- ・帳簿
- ・仕訳帳
- ・総勘定元帳 など
書類や帳簿が規定どおりに保管されていない場合、100万円以下の過料の対象になる可能性があります。
2-2. 法人税法:保管期限7年
概要 |
法人税の課税や徴収について定め、国税収入の確保と公平な税負担の実現を目指すための法律 └契約書の保管は原則7年 |
---|---|
根拠条文 |
◎法人税法 第126条 第121条第1項(青色申告)の承認を受けている内国法人は、財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存しなければならない。 ◎法人税法施行規則 第59条 青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から7年間、これを納税地(第3号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。 |
罰則 | 100万円以下の過料(法人税法第159条1項) |
- ・青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度
- ・青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失欠損金額が生じた事業年度
法人税法とは、会社に課税される税金や納める税金などについて定めた法律です。
法人税法に該当する書類は、帳簿関係の書類やその他の書類など、以下の通りです。
【該当する書類】帳簿関係 |
・総勘定元帳 ・仕訳帳 ・現金出納帳 ・売掛金元帳 ・買掛金元帳 ・固定資産台帳 ・売上帳 ・仕入帳 など |
その他の書類 |
・棚卸表 ・貸借対照表 ・損益計算書 ・注文書 ・契約書 ・領収書 など |
法人税法では、書類の保管義務に違反した場合、100万円以下の過料に課される可能性があるので、注意しましょう。
2-3. 労働基準法:保管期限5年
概要 |
労働者の権利を守るために、雇用者が守るべき最低限のルールを定めたもの └契約書の保管は原則5年 |
---|---|
根拠条文 |
労働基準法 第109条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間保存しなければならない |
罰則 | 30万円以下の罰金(労働基準法第120条) |
労働基準法とは、労働者の権利を守るために定められた、雇用者が守るべき最低限の決まりのことです。
労働基準法に基づき保管すべき書類は以下の通りです。
【該当する書類】- ・雇用契約書
- ・労働契約書
- ・労働条件通知書
- ・賃金台帳
- ・退職手当規程
- ・年齢、学歴、経験等を理由とする賃金差別禁止に関する規定
- ・時間関係帳簿
違反した場合は、30万円以下の罰金に課される可能性があります。
2-4. 電子帳簿保存法:紙の場合と保管期限は同じ
概要 | 税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律で、契約書の保管期限は基本的には紙と同様 |
---|---|
根拠条文 |
電子帳簿保存法 第7条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く) 及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。 |
罰則 | 100万円以下の罰金(会社法976条に準ずる) |
電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿や書類について、電子データで保存することを認めた法律です。書類の保管期限は、紙に準ずる年数で保管することになっています。
保存期間内に破棄したり、備え付けなかったなどの保存義務違反があった場合、100万円以下の罰金が課される可能性があります。
電子帳簿保存法に該当するのは、電子取引で交わされた契約書や書類です。
3.契約書の保管期限でよくある3つの疑問
ここまでの説明を聞いても、契約書の種類や関連する法律は複雑なため、契約書の保管期限に迷うケースもあるでしょう。
そこで、契約書の保管期限に関してよく寄せられる質問について回答していきます。
- ①複数の法律が該当する契約書がある場合はどうしたら良いか
- ②契約書の改訂を行った場合の起算日はいつからか
- ③法律で保存期限が定められていない契約書はどれくらい保管すれば良いか
それぞれについて詳しく説明していきますので、あなたのケースに近い内容についてはぜひ参考にしてください。
3-1. 複数の法律が該当する契約書がある場合はどうしたら良いか?
複数の法律が該当する契約書は、保管期限が長い方に合わせて保管しましょう。
例えば帳簿関係の契約書は、次のように2つの法律で保管期限が定められています。
- ・会社法で「10年」
- ・法人税法で「7年」
上記のように、複数の法律でそれぞれ保管期限が定められている場合は、会社法の「10年」に合わせると良いでしょう。
3-2. 契約書の改訂を行った場合の起算日はいつからか?
契約書の内容を改訂した場合は、起算日が変わるケースと変わらないケースがあります。
下記のように、契約内容自体に大幅な変更があった場合は、改定後の契約書の効力発生日を基準に保管期限を再計算します。
- ・当初の契約とは別に新たな契約内容を追記した
- ・契約内容そのものに変更があった
一方、契約内容自体に大きな変更がない単純な修正であれば、起算日は変わりません。
- ・誤字脱字の修正など軽微な内容
- ・契約期間の延長
- ・契約金額の増減
- ・氏名や連絡先の変更
3-3. 法律で保存期限が定められていない契約書はどれくらい保管すれば良いか?
契約書の保存期限が法律で定められていない場合は、10年程度は保存しておくことが望ましいでしょう。
企業との取引内容、契約金額、またその契約によって生じる権利義務の関係などを考慮すると、会社法と同等の期間は保管しておいた方が安全だからです。
ただ、土地の売買契約書など、高額な取引や長期にわたる権利義務が発生する契約書はトラブルが起きた際に必要になるため、さらに長期の15年〜永久保存が推奨されます。
4. 契約書の保管期限を守らない場合のリスク
ここまでの説明で、契約書の保管期限は把握できたのではないでしょうか。
次に気になるのは、契約書の保管期限を守らなかった場合にどんなリスクが起きるかですよね。
基本的に、契約書の保管に関しては、各法律で定められた期間を守らなかったからと言ってすぐに処罰されるわけではありません。
ただし、会社の信用を脅かすような、次のリスクが起こりうる可能性もあります。
- ①罰則として「過料」が科される可能性がある
- ②保管期限後も長期に保有することで個人情報の漏洩リスクがある
- ③取引先との信頼関係が損なわれて今後の取引に影響が出る
- ④トラブルがあった際に契約内容を証明できない
上記のように、契約書の保管期限を守らないことで、今後の経営に大きなひずみが生まれてしまうかもしれないのです。
それぞれについて詳しく説明していきますので、しっかり確認しておきましょう。
4-1. 罰則として「過料」が科される可能性がある
契約書を法律で定められた期間、保管していない場合、税務署や行政機関から指導を受ける可能性が高いです。
契約書の保管期限内に誤って破棄するなど、帳簿書類等の保存義務に違反した場合には、罰則として「過料」が科される可能性があるでしょう。
- 過料とは…法律違反者に対して金銭の支払いを命じること。
- ◎法人税法…100万円以下の過料 (法人税法第159条1項)
- ◎電子帳簿保存法…100万円以下の過料(電子帳簿保存法第13条第1項)
さらに、保存義務を遵守していなかったことで、税務調査の際に不利な立場に立たされる可能性も高く、場合によっては追徴課税を受けるリスクもあります。
行政から指導を受けたり過料や追徴課税の罰則を受けると、会社としての社会的信用も低くなるので注意が必要です。
4-2. 保管期限後も長期に保有することで個人情報の漏洩リスクがある
契約書を保管期限後も長期に渡って保有することで、個人情報の漏洩リスクがあります。
契約書には多くの場合、マイナンバーや電話番号、住所などの個人情報が記載されています。
情報漏洩リスクを抑えるためにも、不要な契約書は速やかに廃棄するようにしましょう。
4-3. 取引先との信頼関係が損なわれて今後の取引に影響が出る
保管期限内に契約書を間違って破棄してしまったり、保管期限を過ぎても契約書を保有し続けている状態は、取引先との信頼関係にも関わってきます。
契約書は、取引の基盤となる重要な書類です。
その保管を怠るということは、業務遂行能力が不足していることや、法令遵守意識の欠如が疑われるリスクも否めないでしょう。
契約書の保管期限を守らず、信用にキズがつけば、取引の縮小や解消、契約条件の悪化など、今後の取引への影響が出る可能性もあるのです。
4-4. トラブルがあった際に契約内容を証明できない
契約書の保管期限内に間違って破棄してしまうことで、トラブルがあった際に契約内容を証明できない可能性もあります。
そもそも、「あるべきものがない」という時点で会社の信用はかなり損なわれるため、不利な状況に陥ってしまうリスクが高まるのです。
5. 契約書は電子化して保管・廃棄方法を一本化しよう
先ほどのお話で、契約書の保管期限を守らないと、会社に甚大な被害を与えるリスクがあることがお分かりになったかと思います。
ただ、管理を徹底しようとしても、「1.【種類別】契約書の保管期限一覧」でも説明した通り契約書の保管期限はさまざまなので、契約書が多いほど管理が難しくなりミスを引き起こすリスクも高まるでしょう。
そこでおすすめなのが、契約書を電子化して保管や廃棄方法を一本化するという方法です。契約書を電子化することで、コストやスペースの削減、業務効率化などを実現できます。
契約書を電子化する方法は、3つあります。
電子化の方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
①スキャナーで読み取りPDF化 | 手軽に始められる | 検索性が低い |
②電子契約サービスを利用 | 契約締結のプロセスを電子化できる | 契約相手にも電子契約サービスの利用が必要 |
③契約書管理システムを導入 |
・保管、管理、検索など契約書に関する業務を一元化できる ・セキュリティを強化できる |
導入コストがかかる |
上記3つのうち、契約書の保管を一元化して業務効率化を目指したい場合におすすめなのは、「③契約書管理システム」です。
契約書管理システムなら、契約書自体を電子化するだけでなく、保管・管理・検索などの業務を効率化できます。
具体的には、次のようなメリットが期待できるでしょう。- ・場所を問わず契約書の確認ができる
- ・検索機能で必要な時にすぐアクセスできる
- ・タグ付け機能で、契約内容や企業別に分類して保管できる
- ・リマインダー機能やアラート機能で契約更新日や契約書の保管期限を通知してくれる
- ・紙やインク、保管スペースのコストを削減できる
- ・アクセス権限の設定でセキュリティを強化できる
- ・契約書の紛失や破損リスクを回避できる
契約書管理システムは数多く存在するので、自社に必要な機能や予算などを総合して慎重に判断することが必要です。
選び方のポイントやおすすめのサービスを知りたい人は、「契約書管理システム比較表13選|機能・料金・タイプを全解説」で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてください。
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「会社全体で契約書関連の業務を一元化したい」
「グループ会社の契約書を管理したい」
「他の電子契約サービスと連携したい」
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理由は次の3つです。- ①グループ作成の上限や容量が無制限
- ②AI機能により入力や管理の手間を大幅削減
- ③電子契約サービスとの連携が可能
それぞれについて、詳しく説明していきましょう。
6-1. グループ作成の上限や容量が無制限
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6-3. 電子契約サービスとの連携が可能
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7. まとめ
いかがでしたか?契約書の保管期限について、主要な契約書の保管期限や法律、守らない場合のリスクなどについて解説してきました。
最後にこの記事をまとめましょう。
◎契約書の保管期限を定める法律は、主に次の通り会社法 | 会社の取引に関わる契約書 | 10年 |
法人税法 | 会社の経理に関わる契約書 | 7年 |
労働基準法 | 人事や労務に関わる契約書 | 5年 |
- ①罰則として「過料」が科される可能性がある
- ②保管期限後も長期に保有することで個人情報の漏洩リスクがある
- ③取引先との信頼関係が損なわれて今後の取引に影響が出る
- ④トラブルがあった際に契約内容を証明できない
電子化の方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
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②電子契約サービスを利用 | 契約締結のプロセスを電子化できる | 契約相手にも電子契約サービスの利用が必要 |
③契約書管理システムを導入 |
・保管、管理、検索など契約書に関する業務を一元化できる ・セキュリティを強化できる |
導入コストがかかる |
以上になります。契約書の保管期限は書類の種類によってさまざまなので、電子化して管理を一本化することでミスなく保管・廃棄することができるでしょう。
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