「食でつなぐ。人を満たす。」をパーパスに掲げる日本最大級の飲食店情報サイト「ぐるなび」。インターネット黎明期から世の中に新たな価値を提供し続けてきた。
そんなぐるなびが、コロナ禍で集客と三密回避という相反する取り組みに挑戦する飲食店を後押しするため、「OPTiM AI Camera」を活用した集客サービス「飲食店LIVEカメラ」をリリース。従来とは異なる来店促進やマーケティングの施策を展開している。
どのようなものなのか、事業を担当するキーマンに詳しく聞いた。
「OPTiM AI Camera」を活用したぐるなび提供のサイトで混雑状況可視化を集約
2021年11月、「飲食店LIVEカメラ」を東京・秋葉原で大規模に実証実験する「AKIBAのアキバ」がスタートした。「OPTiM AI Camera」と連携した、ライブカメラやセンサーを使って飲食店の店内の状況を可視化し、集客の必要がある時のみ時間制限のあるクーポンを配信できるという、即座の来店を促せるしくみだ。
一方、ユーザーはぐるなびの店舗ページと「AKIBAのアキバ」専用サイト、地域のサイネージから、参加した各店舗内の状況を、匿名化された人のシルエットや「空いている」「やや混雑」「混雑」の3段階で確認できるほか、専用サイトからは15分だけの席キープや限定クーポンの入手ができるというメリットが提供された。
この「飲食店LIVEカメラ」のはじまりは、コロナ禍前の2020年12月にさかのぼる。仙台市の定禅寺通のケヤキ112本に約42万球のLEDを灯す冬の風物詩「SENDAI光のページェント」の際、混雑する飲食店およそ50店舗にライブカメラを設置し、混雑状況を配信する実証実験を実施した。
この後、広島県の観光連盟と組んで同市の流川・薬研堀エリアで全国に先駆けてサービス提供がスタート。さらにこの取り組みは、東京都がデータ利活用の推進のために行っているプロジェクト「東京データプラットフォーム ケーススタディ事業」に採択されて、実証実験として「OPTiM AI Camera」と連携した「AKIBAのアキバ」がスタートした。
ライブカメラを活用した一連の事業を手掛けているのは、新事業を創出するイノベーション事業部インキュベーション推進室に所属する伊東翔磨氏。「店内をリアルタイムで可視化できれば、外食に行くきっかけを提供できるのではないか」という想いから、ライブカメラを活用したサービスの開発に至ったと話す。
「ライブカメラによって、来店客は飲食店のリアルな状況を把握できます。それだけではなく、混雑状況に応じてクーポンを配布できるところに、これまでにない集客施策の特長があります。これを可能にするのは、AIカメラやセンサーなどのICT機器によるセンシングデータと、当社の予約状況を管理する台帳システムとの連動です。この2つの情報を掛け合わせて、混雑状況を分類し、クーポンの自動配信を可能にします」
たとえば、開店時点で予約が少なく空いているとクーポンが表示され、AIカメラやセンサーによって混雑が検知されるとクーポンは自動で止まる。人手を煩わせずに集客をコントロールできるところが魅力だ。
「AKIBAのアキバ」では秋葉原エリアの約50店舗が参加した。東京都のなかでも、秋葉原を、実証実験を行うエリアとして選定した理由は大きくふたつ。「路面店・路地裏・空中階・商業施設などさまざまな立地のタイプの飲食店が存在すること」「人流の傾向が東京都全体と類似しており東京の縮図といえるエリアであること」だったという。
「新宿や渋谷ですと、どうしても繁華街の中心部に人流が集中してしまいます。秋葉原ならさまざまな形態の飲食店がバランスよくありますし、人流の観点からもベストだろうと判断しました」
0次会や2次会のお店探しにも役立ててほしい
「AKIBAのアキバ」ではどのようなメリットがあったのだろうか。
取り組みに参加した飲食店は「空間の可視化で新たなユーザーが安心して来店していただけるか確認したい」「路面店ではなくビルに入居しているテナントのため空席や店内の雰囲気を伝えられるのはありがたい」という声が聞かれたという。
「飲食店の方の反応としては、混雑状況の可視化の価値はもとより、お店の雰囲気をわかってもらえるところに集客効果を期待して参加いただいたケースが多かったです。実際に限定クーポンの発行枚数も相当数ありましたので、私としては手応えを感じています」と伊東氏は話す。
「AKIBAのアキバ」は期間限定の実証実験であったため、2022年3月に終了した。
このサービスの肝になる技術であるAIカメラには、「OPTiM AI Camera」が活用されている。伊東氏は「OPTiM AI Camera」を採用した理由として、可視化技術と匿名性の維持を挙げる。
「可視化の技術が優れているのはもちろんのこと、絶対に人が映り込まないという匿名性は非常に重視していました。飲食店はあくまでも食事などを楽しむ場所です。ちょっとでも人の顔や服装が映ってしまうことは、飲食店もお客様も絶対に避けたいこと。我々としては、匿名性の担保は非常に重視しました」
カメラを設置できる場所は店舗ごとにさまざまなので、撮影範囲をカバーしきれないときは、テーブルにセンサーを置くなどして、混雑状況を完璧に捉えることができた。先端テクノロジーを融合させることで、ユーザーの判断に役立つ情報の配信を実現させたというわけだ。
「直近のぐるなびアンケート調査では、やはり飲食店に行くなら少人数で、という人が圧倒的に多いです。長期化するコロナ禍で、不安定な集客状況が続きますが、少人数であっても外食機会は増えると思います。たとえば0次会や2次会などで飲食店を探すときにも便利だと考えています。1次会は決まっているけれど、その前後のお店は決まっていないことはよくありますよね。すぐに入れるお店を探したいというとき、希望エリアのお店を探して電話をして空き確認するというプロセスは、手間がかかるものです。そのときに飲食店LIVEカメラで、席キープができれば効率的ですし、すばやく意思決定できます。」
また、「OPTiM AI Camera」をツールのひとつとして、POSやモバイルオーダーなどのシステムなども連携させることで、飲食店のDXにも役立つデータを集められるはずと伊東氏は展望する。
「いろいろなデータをつなぎあわせて、飲食店の業務支援につながるシステムをぐるなびで開発し、より安価なサービスとして提供できたらと思います」
「OPTiM AI Camera」と共に、店探しの新たなスタンダードを構築できるか、今後の発展に期待がかかる。
※掲載内容は取材日時点の情報です
株式会社ぐるなび 様
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