「図面管理が上手く行かずに、必要な図面をすぐに見つけられない」
「図面管理をもっと効率良くしたいけど、そもそも適切な図面管理ってどんなの?」
図面管理とは、主に製造業や建設業において作成される「設計図」や「建築図面」などを、適切に保存・管理することです。
ここでいう「適切」とは、業務で図面を活用する人にとって、図面が扱いやすい状態を保てていることを指します。
もう少し具体的に言えば、必要な図面をすぐに見つけられたり、関係する人に図面を簡単に共有できたりするような状態が望ましいといえます。
では、実際のところ図面管理には、どのような方法があるのでしょうか。現在、主流といえるのは以下の通りです。
上の図でも分かるように、図面管理の方法は基本的に2パターンです。
古くからとられている方法としては、紙による図面管理でしょう。しかし、紙による図面管理にはさまざまな課題が存在します。
- 必要な図面がなかなか見つからない
- 図面が見つかりにくいため、同じ図面を何枚も作成してしまう
- 最新版の図面がどれか分からない
- 社外との共有に手間がかかる、など
これらの不便・課題を解決して、より適切な管理を叶えたいと考えるのであれば、データによる図面管理一択だといえます。ただ、長年にわたって紙による管理を行ってきた場合、
「いきなりデータによる管理がおすすめと言われても…」
「データでの管理とか難しそうだから…」
などと感じるものですよね。
とはいえ、面倒だから、よく分からないからと先送りにしていても、問題の解決は叶いません。
そこで本記事では、データへの移行をスムーズに行えるよう、以下について基本から分かりやすく解説していきます。
- ◎図面管理の基本
- ◎図面管理の2つの方法
- ◎データでの管理がおすすめな理由
- ◎データで図面管理を行う6STEP
- ◎図面管理を行う管理ツールについて
「適切な図面管理で、業務をもっと効率よく進めたい…」と感じているのであれば、ぜひ最後まで参考にしてください。
1. 適切な図面管理とは、設計図面や建築図面などを業務が進めやすいように保存・管理すること
適切な図面管理とは何かといえば「現場にとって業務が進めやすいように図面を保管・管理すること」を指します。
具体的には以下のような状態を維持することが、適切な図面管理といえるでしょう。
- 必要な図面をすぐに取り出せる
- 最新版の図面がどれか分かりやすくなっている
- 過去の図面を流用して、最新版や類似図面を作成できる
- 社内外への共有が簡単にできる
必要な図面がすぐに取り出せることは、業務をスムーズに進めるためにも大切なポイントです。
また、最新版の図面がどれなのかが分かりやすくなっていれば、図面の更新が簡単になり、間違った図面を使うリスクも低減できます。
関係者への図面共有が簡単になれば、雑務に手間を取られることもありません。
このような状態を維持するために必要となるのが、図面の「作成」「活用・閲覧」「保存」「破棄」それぞれの段階で、適切な状態を保つよう管理することです。
それぞれの段階における適切な状態と、その状態を保つために必要なことを簡単に見てみましょう。
【図面の段階ごとの管理】
段階 | 適した状態 | 状態を保つためにやること |
---|---|---|
図面の作成 |
|
|
活用・閲覧 |
|
|
保存 | 法令・社内規則に則った期間きちんと保存される |
|
破棄 | 不要になった図面が存在しない |
|
図面管理を適切に行うには、段階ごとに、どのような状態を保つべきなのかを理解しておかなければなりません。
特に図面の活用・閲覧時は、社内だけではなく、社外の関係者と図面を共有する場面も多々あります。
例として、製造業における図面の場合を見ていきましょう。図面を外部と共有する場面としては、お客様が図面を確認する場合や一部の業務を下請けに出す際などが挙げられます。
上記のような場面でも、適切な管理を行えていれば、必要な図面を必要な数だけ手間なく用意できるはずです。
このように、何となく管理するのではなく適切な管理を行うことで、業務を滞りなくスムーズに進めやすくなるでしょう。
【ずさんな管理によるリスク】
一方、ずさんな管理をしていると、スムーズに図面を共有できないだけではなく、図面そのものを間違えて渡してしまう恐れもあります。
相手からの信頼を損ねることはもちろん、社員が自ら情報流出をしてしまう結果につながりかねません。
このような事態を招かないためにも「適切な」図面管理が重要になるのです。
2. 図面管理の方法は大別すると「紙」と「データ」の2パターン
図面管理の方法は、大別すると紙による管理とデータによる管理に分けられます。紙・データによる管理のメリット・デメリットは以下の通りです。
【管理方法ごとのメリット・デメリット】
メリット | デメリット | |
---|---|---|
紙 |
|
|
データ |
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|
表で見られるように、紙よりデータによる図面管理のほうがメリットが多く、デメリットが少ないことが分かるのではないでしょうか。
以下より、管理方法と併せてメリット・デメリットも、より詳しく見ていきましょう。
2-1. 紙で管理を行う方法
紙で図面を管理するには、図面の種類ごとにファイリングをする方法が挙げられます。
ファイリングをした後は、図面の品番や案件、お客様ごとに、ファイルボックスやストッカーに分けておくと見分けやすくなるでしょう。
ファイルボックスへ分ける基準は、お客様が少ない場合は品番や案件ごと。お客様が多くなる場合は、お客様ごとに分ける方法がおすすめです。
2-1-1. 紙で管理を行うメリット
- 修正、追加情報を直接紙に書き込める
- システムに詳しくない人でも扱いやすい
紙による図面管理の特筆すべきメリットは、図面に直接書き込める点だといえます。小さな変更点や、作成時のコツなど、図面を新しく作成するほどでもない変更などで有用です。
しかし、直接書き込むことで、かえって図面そのものが見づらくなることも考えられるため、書き込みすぎないよう注意しましょう。
システムに疎い人でも扱いやすいという点に関しては、あえて言えばメリットになるというくらいです。さまざまなシーンでデジタル化が進む昨今の状況を考えると、詳しくないからIT化を遠ざけるというのは、あまり現実的とはいえません。
2-1-2. 紙で管理を行うデメリット
- データに比べると必要な図面が見つかりにくい
- 最新版がどれか分かりにくい
- 汚損しやすい
- 社外への共有がしにくい
- 共有時に同じ図面を複数作成する必要がある
- 別途保管場所が必要
一方、紙による図面管理のデメリットは、多めといえます。
特に、現場で扱うことが多い図面の汚損は大きなデメリットといえるでしょう。汚損するたびに、補修や新しい図面を作り直す必要が出てきます。
また、紙の図面を共有するには、手渡しや郵送など共有までに手間や時間がかかりがちです。郵送の場合は別途コストもかかるため、管理が面倒なこと以外にもデメリットが発生します。
先述したように、図面は社外と共有することが多い技術書類です。スムーズに共有しにくいという点は、業務の進行を阻む大きなデメリットとなります。
2-2. データで管理を行う方法
データで図面管理を行う方法も、基本的な考え方は紙による管理と同じです。
図面の品番や案件、お客様ごとにフォルダを作り、作成したデータを格納していきます。
そして、データで管理を行う場合は、別途管理表を利用することも特徴的です。Excelなどのテンプレートや、専用システムの管理表を用い、図面の進捗状況やバージョン管理を行います。
【管理表の一例】
まとめていうと、図面そのものをデータで保管し、管理表で図面の状態や活用状況を管理するということです。
データで管理をする場合は、図面そのものを確認する際、紙の図面のように、ぱらぱらとめくるだけで中身を確認できないため、検索性を上げるための工夫を行うことが大切です。
一例として挙げられる方法は、ファイル名に図版や製品名、作成・更新日を記載するようルール化することです。
徹底したルール化を行うことができれば、検索性は格段にアップします。パソコンの検索窓に必要な文言を入力するだけで、すぐに必要な図面を見つけられるようになるでしょう。
2-2-1. データで管理を行うメリット
- 紙の管理より必要な図面を見つけやすい
- PC、タブレットなどで図面を見られるため、図面を探すための移動が不要
- 基本的に劣化しない
- 社内・社外への共有が簡単
- 物理的な保管場所が不要
データによる図面管理の特筆すべきメリットは、何よりも図面を探すために保管場所へ行かなくても良い点です。
PCやタブレット、または業務用のスマホなどからデータにアクセスできるため、自席や現場ですぐに必要な図面を閲覧することが叶います。
特に製造業の現場では、図面を探しに専用のキャビネットや部屋に行かなくて良い点は、余計な工数を削減するためにも大きなメリットとなるでしょう。
また、紙と異なりデータは基本的に劣化しません。汚れたり破れたりすることがないため、同じ図面を何枚も複製する必要がなくなるのです。
同じように、社外への共有もデータを送るだけと手軽になり、郵送する際に必要なコストも発生しません。
2-2-2. データで管理を行うデメリット
- データの保管・保存用に使うツールによっては、導入、維持費がかかる
- データを保管・管理用に使うツールによっては、システム自体を管理する必要がある
- 紙からデータに移行する場合はスキャンの工程が必要
デメリットとしては、選んだシステムによってはコストが高くなったり、システム自体の管理(保守)が必要になったりする点だといえます。
コストが高い・システムの管理が必要になるのは「オンプレミス型(※)」のシステムを導入した場合です。クラウド型であれば、比較的手軽に導入・運用を行えます。
また、仕方がない点になりますが、紙の図面管理からデータの図面管理に移行する際には、どうしても紙の図面をデータ化するために「スキャン作業」が必要です。
図面の量によっては、スキャン作業だけで長い時間を拘束されることも考えられます。
すべての図面をデータ化できるまでは、雑務が増えることを知っておきましょう。
【(※)オンプレミス型について】
オンプレミスとは、サーバー、ネットワーク機器、ソフトウェアなど全てを、自社内で運用・保守を行う方法を指します。外部のネットワークにつなぐ必要がないため、セキュリティの面から見ると非常に安心できます。
一方、システムが正常に稼働できるように、システムそのものの管理やメンテナンスが発生するため、ITに関する知識がない企業には向きません。
3. 図面管理を適切に行うならデータでの管理が必須!
紙、データによる図面管理の方法を見てきました。
メリット・デメリットでも分かるように、単純に図面管理を行うのではなく、より適切な管理を行うのであれば、データによる管理が必須といえます。理由については、以下4つの点が挙げられるでしょう。
- データ化することで物理的なスペースが不要になる
- より迅速に必要な図面にアクセスできる
- 図面の紛失・消失・汚損の予防が容易になる
- セキュリティを強化できる
ここから詳しく解説していきます。
3-1. データ化することで物理的なスペースが不要になる
データ化することで、管理すべき図面を保管するための物理的なスペースが不要になります。
紙の図面は、ファイリングをして管理を行うため、どうしてもファイルを保存するためにスペースが必要になりますよね。
最初は数冊程度のファイルであったとしても、図面の種類やバージョンが増えれば、図面の保存のためだけでスペースを圧迫する可能性もあります。
しかし、図面そのものをデータ化してしまえば、パソコン(サーバー)上やクラウド上に保存ができるため、物理的なスペースが必要なくなるのです。
保存のためのスペースが不要になれば、より効率的にオフィス内のレイアウトを整えることができます。
デスクを増やせば社員の増員が叶います。また、観葉植物やドリンクコーナーを設ければ、社員への福利厚生にも寄与してくれるでしょう。
物理的なスペースが不要になることは、場所的なコスト削減と併せて、社員満足度を底上げできる期待も持てるのです。
3-2. より迅速に必要な図面にアクセスできる
データでの管理に移行すると、より迅速に必要な図面にアクセスできるようにもなります。
紙図面のように、ファイルを1冊ずつ確認する必要がなく、パソコンの検索窓に情報を入力するだけで、ピンポイントで必要な図面をピックアップしてもらえるからです。
より具体的なメリットとしては、以下のような例が挙げられます。
その場ですぐ必要な図面を探せるので時短になる |
---|
PCやタブレットなどで図面を確認できるようになるため、図面を探すためにキャビネットなど特定の場所に赴く必要もなくなります。 自席や現場で、すぐに図面を確認できるため「探す」という手間が省け、業務効率向上につながるでしょう。 |
顧客にすぐ図面を提示できるため、ビジネスチャンスを逃さない |
取引先の会社に訪問している際「今度〇〇の図面を確認させてほしい」と言われたとしましょう。紙の図面で管理している場合、一度会社に戻って図面を探すことから始めなければいけません。 図面を見つけても、郵送したり別日に改めて取引先を訪問したりしなければ、図面を確認してもらうことはできませんよね。 「スキャンすればメールで送れる」と考えるかもしれませんが、どちらにせよ一度会社に連絡をしたり、図面を探しに戻ったりしなければいけないことは同じです。 しかし、データで図面を管理してれば、タブレットなどを活用して依頼されたその場で、すぐに図面を確認してもらえるのです。 |
使用ツールによっては、あいまいな情報からも検索できる |
全てのツールに共通しているわけではありませんが、データ管理に柔軟なシステムを用いていれば、あいまいな情報でも、目的の図面を探せるようになります。 例えば、図面の番号やファイル名を失念した場合などに、図面に記載された文字も検索対象にできる「全文検索機能」を搭載したツールであれば、関連情報の入力だけで該当の図面を検索できるのです。 |
このように、さまざまな場面で容易なアクセスによるメリットを実感できるはずです。
より図面を活用しやすいように管理を行いたいのであれば、やはりデータ化は必須といえるでしょう。
3-3. 図面の紛失・消失・汚損の予防が容易になる
図面の紛失や消失・汚損の予防が紙の図面より容易になる点も大きな特徴です。
そもそも紙のような現物ではなく、データなので半永久的に汚れたり破れたりすることがないからです。
また、紛失・消失に関しても、定期的にバックアップ(※)を取ることで対策が可能です。
朝一、または業務が終わったタイミングなどで、細かにバックアップを取っておけば、万が一災害などでパソコンが壊れたりデータが飛んでしまったりしても、簡単に復元が可能です。
企業で扱う紙書類の中でも、図面は現場で扱うことも多いため、どうしても汚損しやすいもの。データ化を行うことで、劣化を避けやすくなるため、業務での取り扱いもしやすくなるでしょう。
【(※)バックアップについて】
バックアップとは、パソコン上などに保管しているデータのコピーを、別のメディアに保管・保存することを指します。
バックアップの保存先となるメディアには、外付けHDD(ハードディスク)やクラウドストレージなどを用います。基本的には「普段メインで使っているパソコン以外にも保存すること」と覚えておけばOKです。
3-4. セキュリティを強化できる
データ化・データで管理することで、セキュリティも強化しやすくなります。
図面データを管理するシステムを用いれば、図面ごとでアクセス権限を設定できるようになるためです。アクセス権限とは、特定のデータに対する閲覧、編集、破棄などのアクションをどこまでできるかを設定できるもの。
例えば、Aさんはすべての図面を閲覧・編集・破棄できるけれど、Bさんは〇〇と△△の図面の閲覧しかできない、といった設定が可能です。
アクセス権限を設定することで、図面管理に関係なかったり、図面を活用したりする人以外は図面までたどり着くことができないようになります。
この機能を用いることで、情報の流出や予期せぬデータの上書などを防げるようになり、セキュリティの強化を実現できるでしょう。
【管理すべき図面が少ないなら紙の管理でOK】
ここまでデータによる図面管理の必要性に触れてきましたが、管理すべき図面が少ない場合は、データより紙による管理のほうが向いているといえます。
この場合、データ化を行うことで、かえってシステムの維持費にコストを割かれる可能性もあるからです。
図面が少なく将来的にも増える予定がない、現状管理に問題がない場合は無理にデータ管理に移行する必要はありません。
4. データで図面管理を行うためにやるべきこと6ステップ
では実際にデータで図面管理を行うには、どのような手順で進めていけば良いのでしょうか。ここでは、データで図面管理を行う際に必要な、以下の6STEPについて解説します。
- 図面データの保管ルールを決める
- 保管・保存先を決める
- 図面のデータを準備する
- メンバー間で図面を共有する
- 図面の最新版が判別できるよう更新情報を管理する
- 法令・企業ごとで定められた保存期間を守る
事前に流れを把握しておくことで、何から手をつければ良いのかを理解できるはずです。
4-1. 図面データの保管ルールを決める
データで図面管理を行う際、最初に行うことは図面データの保管ルールを決めることです。
お伝えしているように、データ化をすることで、検索機能が使えるため必要な図面を探しやすくなります。
しかし、データによる管理は、保管ルールを定めていないと、かえって図面がどこにあるのか分かりにくくなる可能性があります。
紙の図面のように、気軽に図面内容を確認できないため、内容を確認しながら探すとなると時間がかかってしまうのです。
このような事態を招かないためにも、まずは保管ルールを決めておきましょう。定めるルールの一例は以下の通りです。
4-1-1. フォルダ階層のルール化
作成した図面(ファイル)を格納するフォルダの階層を、どのようにするのかを決めておきましょう。
フォルダの階層をあらかじめルール化しておくことで、どこにどの図面や関連書類が格納されているのかが一目で分かるようになります。
【フォルダ階層の一例】
一般的な階層としては上記のような例が挙げられます。第一階層、第二階層の種類をどうするかは、業務内容などでも異なるため、自社にとって分かりやすいと思えるものを設定しましょう。
よく見られる階層としては、クライアント名→プロジェクト(製品)名→図面の種類などです。
4-1-2. ファイル・フォルダの命名規則
ファイル・フォルダの命名規則は、検索性を高めるために必須のルールです。
社員がそれぞれで、好きな名前を付けているようでは、名前を付けた人しか検索できなくなる可能性があるからです。
例えば、ルール化しないまま、暗黙の了解で「図番_図面の作成・更新日_クライアント名」になっていたとしましょう。しかし新入社員や中途社員などは、ルール化されていない暗黙の了解など分かりませんよね。
なんとなくで「図番_今日の日付_自社名」と付けてしまえば、ぱっと見には間違えていることが分かりません。これでは後になって、検索しても思うように目的の図面が見つけられないことになってしまいます。
図面を保管・保存する場合の命名規則に、法的なルールは定められていません。だからこそ、社内の関連社員が同じ認識を持つためにも、命名する際のルール化が必要なのです。
【ファイル名の一例】
図面における分かりやすい命名規則は、一般的に「図版_名称_作成・更新日」が基本です。自社が扱う図面や、フォルダの構造に合わせてルール化していきましょう。
4-1-3. アクセス権限のルール化
誰にどの程度のアクセス権を付与するかも、あらかじめルール化しておくと良いでしょう。
ルール化しておくことで、アクセス権を決める際に迷う余地が少なくなるからです。
一例としては、以下のようなルールが挙げられます。
- プロジェクトリーダーは全ての図面を閲覧・編集・破棄ができる
- 図面作成者は、自身が作った図面においては閲覧・編集が可能
- 製造課の一般社員は閲覧のみ可能 など
扱う図面や企業によって必要な権限の幅が変わるため、上記はあくまでも一例であり、より細やかな権限設定が必要なケースもあります。
上記の例からいえば、製造課の社員でも、自身が関わる図面以外は閲覧不可にするなどです。
「自社の場合はどうか?」を考えて、細かな点までルール化しておきましょう。
なおルールは策定するだけではなく、実際に守られなければ意味がありません。マニュアル化するなどして、共有しやすくしておくことも大切です。
4-2. 保管・保存先を決める
事前にルールを定めた後は、実際に図面データを保管するツールを決めましょう。
保管先として用いられる代表的なツールは、以下のようなものが挙げられます。
【保管先となる代表的なツール】
保管先の一例 | 特徴 | おすすめな企業 |
---|---|---|
【おすすめ!】 図面・文書 管理ツール |
図面などの書類を管理する専用のツール。 管理に特化しているため、管理に必要なさまざまな機能が揃っている。 |
基本的に全ての企業。 保管・保存と併せて効率的に図面の管理を行いたい場合。 |
ファイル サーバー |
OSのファイル共有機能を使って、ネットワーク上でファイルの共有・保管ができる。 サーバー構築が必要になるが、アクセス権限・セキュリティの柔軟な設定が可能。 |
サーバーの設置、メンテナンスが必要になるため、SEやシステム担当者など、IT・システムを一定以上理解できている企業。 |
オンライン ストレージ |
インターネットを使って、オンライン上にファイルを保管できる。 出先でもアクセスしやすいなどの利点があるが、サービスによってはセキュリティの脆弱性が気になることもあり。 |
保管・保存すべきデータが大量。 図面を共有する機会が多い企業など。 |
代表的なツールの中でも、おすすめになるのは図面・文書管理ツールです。
表でも触れているように【管理】に特化しているため、さまざまな機能で管理業務をスムーズにこなせるようになるはずです。
管理ツールの種類・選び方などは「データによる適切な図面管理をスムーズに行うなら管理ツールの利用がおすすめ」で後述するため、参考にしてください。
4-3. 図面のデータを準備する
図面管理をデータで行うには、まず、図面のデータを準備しなければなりません。
現状、紙で保管している図面をスキャンしてデータ化します。
スキャンの主な方法は以下の通りです。
【図面のスキャン方法特徴とやり方】
スキャン方法 | 特徴 | やり方 |
---|---|---|
スマホでスキャン | 手持ちのスマホでスキャンできるため手軽。 スキャン対象が少ない場合におすすめ。 |
|
専用スキャナ | ハンディス・据え置きタイプなど種類が豊富。 スマホではセキュリティ面が不安なときにおすすめ。 |
|
複合コピー機 | スマホ・専用スキャナより大きな図面にも対応できる。 図面サイズが大きい、スキャンすべき図面が多い場合におすすめ。 |
|
スキャン代行業者 | 図面のスキャンを代行してくれる。 スキャンに使う時間がない、スキャンすべき図面が膨大な場合におすすめ。 |
|
紙の図面からデータ化するには、図面の量が多いほど時間がかかります。
時間的なコストと、スキャンにかかる費用を比較して自社に合った方法を選びましょう。
スキャンをした後は「図面データの保管ルールを決める」で定めたルールに沿って、保管先として選んだツール上に保管してください。
【新規で図面作成を行う場合の注意点】
新しく図面を作成する際は、紙の図面を作成しないよう注意しましょう。
データで管理するはずなのに、新規図面を紙で作っても意味がないからです。
業界によって利用する図面作成ツールは異なるため、自社の業種に合ったツールを利用しましょう。代表的なツールは「AutoCAD」「Solidworks」などが挙げられます。
なお、図面作成ツールで作成した図面は、紙に出力することも可能です。
4-4. メンバー間で図面を共有する
実際に図面の管理を始めたら、メンバー間で図面を共有して活用できるようにします。
図面ごとであらかじめ共有しておくことで、必要な図面を別途探す必要がなくなるためです。
図面を共有する場合は、先述した「アクセス権限」をしっかり設定して、図面の流出や予期せぬ上書きなどが起こらないようにしましょう。
例えば、当社オプティムの「OPTiM 文書管理」では、閲覧・編集・ダウンロード・削除それぞれの権限設定が行えます。
そもそも閲覧しかできないように設定していれば、うっかりミスも起こしようがありません。
社外にメンバーがいる場合でも、安心して図面の共有ができるようになるでしょう。
4-5. 図面の最新版が判別できるよう更新情報を管理する
図面管理において、最新版がどれなのかを判別できるよう、更新情報を管理することも大切な工程です。
更新情報の管理をきちんと行えていないと、古い図面を最新のものだと勘違いしてしまう恐れがあります。
製造業であれば、更新前の図面を使ったことで納品できない製品を作成してしまうことにもなりかねません。
建設業の場合は、変更が反映されていないとして、お客様との信頼関係が揺らいでしまう恐れも考えられます。
図面の更新は比較的、頻繁にあると考えられるため、軽く考えず一目で分かるようにしておきましょう。
バージョン管理の代表的な方法は、ファイル名に更新日を入れる方法です。
また、古い図面を更新した際には、併せて古いバージョンの図面を専用のフォルダに移しておく方法もおすすめです。
4-6. 法令・企業ごとで定められた保存期間を守る
図面は業界によって、定められた保存期間が異なります。建設業の図面(設計図書)は建築士法、製造業の場合はPL法によって定められています。
それぞれの保存期間について確認してみましょう。
【業界ごとで見る図面の保存期間】
業界 | 法 | 保存期間 |
---|---|---|
建設業界 | 建築士法 | 15年間 |
製造業界 | PL法 | 一定期間 |
建設業界における図面(設計図書)は、明確に15年の保存が義務付けられています。すでに工期が終わった図面などは、法に則って保存をするようにしましょう。
一方、製造業における図面の保存期間は「一定期間の保存義務がある」とされるだけで、保存期間が明確に定められていません。
そのため製造している製品や、企業の考え方で保存期間が決まると考えて良いでしょう。
一般的な目安は「製品の開発から、次世代製品への切り替え」+5~10年程度とされます。新しい製品が出た後、旧製品の部品交換が必要なくなるまでということです。
ただし、上記はあくまでも一例です。
製品によっては技術資料としての保存が求められるケースもあるため、図面ごとで保存期間を吟味しましょう。
5. データによる適切な図面管理をスムーズに行うなら管理ツールの利用がおすすめ
データで図面管理を行うのであれば、ファイルサーバーやストレージより、図面・文書管理用ツールがおすすめだと紹介しました。
では、実際のところ管理ツールとはどのようなものがあり、何を基準に選択すべきなのでしょうか?ここでは管理用ツールについて、以下4つの点を解説します。
- 管理ツールの種類
- 管理ツール導入・運用にかかるコストの目安
- 管理ツールの基本的な機能
- 自社に合った管理ツールを選択するための選び方
自社に合った管理ツールを選べるようになることで、より効率的な図面管理が叶うはずです。
5-1. 管理ツールの種類
管理ツールの種類は、大きく分けて以下の2種類といえます。
- 図面に特化したタイプ
- 文書管理ツール(図面を含めた関連書類も管理できるタイプ)
図面に特化した管理ツールは「図面の作成・管理」が得意なツールといえます。作成した図面を管理するだけではなく、図面作成を行えるツールもあるのです。
「今まで紙の図面ばかりで、データ化を行うにあたって図面作成ツールも必要」という場合であれば、図面管理ツールを選ぶと良いでしょう。
一方、文書管理ツールは、図面を含めた関連書類も管理できるツールを指します。
さまざまな書類を一元管理できるようになるため、帳票を含む会計書類なども併せて管理しつつ、図面に関係する書類の紐づけを行いたい場合に便利です。
また、文書管理ツールには、図面作成の機能は基本的に搭載されていません。
図面作成ツールも必要な場合は図面管理特化、図面作成ツールをすでに利用中なら「文書管理ツール」など、自社の状況に合わせて選んでみましょう。
5-2. 管理ツール導入・運用にかかるコストの目安
管理ツール導入・運用にかかるコストは、ツールによって千差万別といえます。
以下に、主な料金形態ごとの費用目安をまとめたので、ツールタイプを選ぶ際の参考にしてみてください。
【管理ツールの費用目安】
種類 | 費用目安 | 特徴 |
---|---|---|
クラウド型 | 【サブスクタイプ】 導入費用:0円 1ユーザーあたり500円~ |
ユーザーごと、アカウントごとに費用が発生する。 |
【月額タイプ】 導入費用:0円~ 月額:6,000円~100,000円など |
月額制でサービスを利用するタイプ。 | |
オンプレミス型 | 導入費用:60万~100万円前後 運用費:年間数十万円~ |
自社内でサーバーを構築し、運用・保守を行う |
クラウド型の管理ツールの料金体系は、大きく「サブスクタイプ」「月額タイプ」に分けられます。ツールの特徴は同じですが、料金が大きく異なるケースもあるため、両者の違いも正しく把握しておきましょう。
【サブスクタイプ】
ユーザーやアカウントごとに費用が発生する料金体系です。対象が1人・1アカウントからとなっているため、図面管理に関わる人数が少ないほど、低コストでツールを利用することが叶います。
反面、図面管理に関わる人数が増えれば、後述する月額タイプよりコストが高くなる可能性もあります。単価だけで安易に飛びつかないよう注意しましょう。
【月額タイプ】
月額タイプは、文字通り「月当りの料金があらかじめ決まっている」タイプです。
月々の料金が決まっているからこそ、年間の費用計画を立てやすい点が特徴です。価格帯の幅が大きいタイプでもあるため、費用と併せて機能面を見ながら選んでいきましょう。
【オンプレミス型】
オンプレミス型は、導入費用が高額になる点が大きな特徴です。
自社内にサーバーを構築したり、システムに必要な機材を始めにそろえたりする必要があるためです。
一方、基本的に自社内で完結するスタンドアロンであるため、高いセキュリティ性能を誇ります。
5-3. 管理ツールの基本的な機能
管理ツールに搭載されている基本的な機能は、以下の通りです。
【管理ツールの基本機能一例】
・保管/保存機能
図面や関連書類を、あらかじめ定めた階層別で保存ができる
・検索機能
ファイル名やフォルダ名から検索がかけられる。全文検索搭載のツールであれば、ファイル内の全ての文章が検索対象になり、より検索しやすくなる
・バージョン管理機能
図面・文書の更新情報を管理する機能。更新時に複製された図面・文書を別途保存し、最新版にすぐアクセスできるようになる
・期日管理機能
管理する図面や文書に設定された任意の日付項目から、事前通知を行う機能。確認忘れ・提出忘れの予防になる
・アクセス権限機能
図面や文書ごとに、閲覧・編集・破棄の権限を設定できる機能。図面に関係ない人からの不正な持ち出しなどを防げる
・文書の紐づけ機能
図面と関連書類を紐づける。図面・関連書類それぞれにリンクが張られるため、図面内のリンクをクリックするだけで、関連した契約書などにすぐアクセスできる
ここに挙げた機能は、あくまでも一例です。
ツールによっては基本とされる機能でありながら、搭載されていなかったり、機能名が異なったりする場合もあります。
ツールの機能面を確認する際には、実際にどのような機能で、何ができるのかまでしっかり確認しましょう。
5-4. 自社に合った管理ツールを選択するための選び方
自社に合った管理ツールを選択するには、まず管理ツールを導入する目的を明確にしておく必要があります。
目的を明確にしておくことで、どのようなツールが必要なのかが分かりやすくなるためです。
悩みから導かれる目的、そして目的に沿ったツールや機能の一例は以下の通りです。
【管理ツール導入時に考える目的と対応機能】
悩みと目標 | 解決に必要なツール・機能 |
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管理用ツールは機能が豊富で、扱われているサービスも多岐にわたります。
ツール一つ一つを確認する前に、まずはなぜ管理ツールが必要なのかを明確にして事前に選択肢を絞れるようにしておきましょう。
6. 図面管理を正しく効率的に行うならOPTiM 文書管理をお試しください
図面管理を適切かつ、効率よく行いたいのなら「OPTiM 文書管理」の活用がおすすめです。
OPTiM 文書管理は、名称通り図面を含む、企業で扱われるさまざまな文書を一元管理できるツールです。
導入まではもちろん、運用開始後もお困りごとがあれば相談できるサポート体制となっているため、
「これまで紙で図面を管理してきたのに、急にツールを使ってデータで管理できるだろうか…」
とご心配な方にこそおすすめできるツールです。
その他、以下のような便利な仕組みも備わっています。
【OCR処理によって図面も全文検索が可能】
スキャンデータへの対応として、アップロード後に自動でOCR処理を行うため、図面内に書かれた文書も文字データとして認識できます。この機能によって、検索性が格段にアップ!
ファイル名や案件名を失念したけれど、自分が図面に書き込んだ一文は覚えているようなことがありますよね。OPTiM 文書管理であれば、この書き込んだ一文で図面の検索が可能になるのです。
手書きの文字はもちろん、高性能なOCR機能はゴム印などの文字もしっかり認識してくれます。
【図面と関連文書の紐づけが簡単】
クラウドストレージへの連携が行えるため、今まで使っていたフォルダから自動で図面データをアップロードすることも可能です。
複数のフォルダと連携でき、図面と関連文書の紐づけも簡単。紐づけた後は、ワンクリックで関連文書を閲覧できるため、別途書類を探す手間を省けるでしょう。
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「図面管理を行っているのに、いつも必要な図面がすぐに見つからない…」とお悩みなのであれば、OPTiM 文書管理をぜひお試しください。
現在無料トライアルを実施中なので、導入前に使用感をお試しいただくことも可能です。
7. まとめ
本記事では、図面管理の必要性や方法、ツールの選び方などについて解説しました。
図面管理は大別すると「紙のまま管理」「データで管理」の2つに分けられます。しかし、紹介してきたように図面管理を適切に行うのであれば、紙より断然データによる管理がおすすめです。
おすすめになる理由を、今一度おさらいしてみましょう。
- データ化することで物理的なスペースが不要になる
- より迅速に必要な図面にアクセスできる
- 図面の紛失・消失・汚損の予防が容易になる
- セキュリティを強化できる
上記以外にも、企業によっては業務効率の向上などさまざまなメリットが見込めます。
データによる図面の具体的な管理手順は以下の通りです。
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管理すべきツールの選び方なども参考にして、自社の業務がスムーズに進められるような図面管理を実践していきましょう。