請求書管理の基本|適切なやり方や方法を売り手・買い手ごとに解説
公開日:2024/11/22
「今まで我流でやってきたけど、正しく請求書の管理を行うにはどうすべき?」
「顧客とのやり取りや、税務調査などで問題が発生する前に請求書管理のやり方を是正したい…」
日々請求書の管理を実施する中で、上記のようにもっと適切に進めたいと感じていらっしゃるのではないでしょうか。
まず、基本に立ち返った適切な請求書の管理方法は以下のとおりです。
「請求書」と、管理する書類の種類が決まっていれば、上記のようにファイルやフォルダ分けすることで分かりやすい管理が叶います。
そもそも請求書は取り引きを証明する「証憑書類」です。法律によって保存期間も定められているため、適切な管理が必要になるのです。
未入金や未支払いなどの予防になることから、業務効率向上も期待できるでしょう。
とはいえ、新たに電子帳簿保存法やインボイス制度などが始まったことから、適切な請求書管理のハードルが上がっていることも事実です。
「効率的な請求書管理のためにデータ化したいけれど、電子帳簿保存法がよく分からない…」という方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、電子帳簿保存法へ対応しつつ、効率的に請求書管理を行うためにおすすめな方法も解説します。
この記事で分かること |
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本記事を最後まで読んでいただくことで、適切に請求書管理を行えることはもちろん、電子帳簿保存法に対応しつつも効率良く管理をするための一歩を踏み出せるはずです。
ぜひ参考にして、日々の業務効率を向上させてください。
1. 請求書の管理の仕方【発行した請求書の場合】
請求書を自社で発行した場合は、基本的に保存義務はありません。しかし、控えを作成した場合は保存・管理義務が発生します。まずは請求書を発行した側の管理方法について見ていきましょう。
また、適格請求書を発行した場合のポイントにも触れていきます。
1-1. 未入金・入金済みでステータスを分けて管理する
請求書を発行した側の場合、まずは未入金・入金済みで分けて管理する方法がおすすめです。
入金・未入金で分ける理由は、単純に両者を混在したままだと、未入金のチェックが煩雑になるからです。
期限を過ぎても未入金のままの請求書があれば、取引先に連絡をしなければいけませんよね。しかし、請求書をまとめて管理していると、未入金の請求書に気付くのが遅れてしまうのです。
悪質な企業が混ざっていれば、そのまま入金を行わない可能性もあります。正しく入金を確認するためにも、まずは未入金・入金済みで分けて管理しましょう。
また、入金済みとなった紙ベースの請求書控えは、別途用意したファイルに移します。
紙の場合とデータの場合で流れを具体的に示すと以下のようになります。
【紙の場合】請求書の控えをファイリングする際には、入金予定日の順で綴じていくと入金の確認がしやすくなります。
また、入金済みのサインや印を押す際には、実際に入金された年月日を書きこんでおきましょう。後日確認する際に便利になります。
【データの場合】Excelなど、データで管理をする場合も専用のフォルダ(図1)を作ってファイルでの文書保存を行います。ただし、紙ベースでの管理と異なり、フォルダ間で未入金・入金の管理を行う必要はありません。
データによる管理の場合、フォルダの中身を確認するのは、紙ベースの請求書より手間がかかります。そのため管理のための一覧表を作りましょう(図2)。
まとめると、データによる請求書管理は、フォルダで請求書そのものを保存し一覧表で管理を行うイメージです。
なお、上記画像(画像2)のように、プルダウンでステータスを変えられるようにしておくと、一目で未入金・入金の別が分かりやすくなります。手入力より、表記が統一され検索性も上がるため利便性の向上が可能です。
1.プルダウンを設定したいセルにカーソルを置き、Excelのメニューから、
[データ]→[データの入力規則]→[データの入力規則]
をクリック。
2.[データの入力規則] の設定画面が表示されたら、[設定]タブの[入力値の種類]のタブの中から[リスト]を選択。
3.[元の値]という設定項目が表示されたら、[元の値]の中に、プルダウンの選択項目を以下の通り入力していきます。
未入金,入金
4.最後にOKをクリック。セルにカーソルを合わせるとプルダウンが設定されていることがわかります。 他のセルに同じプルダウンを表示させたい場合には、コピー&ペーストで対応できます。
1-2. 入金済みの請求書は月ごと・請求先ごとで管理する
ここからは、入金済みの請求書を管理する方法(保管する方法)について見ていきましょう。
取引先が少ない場合は、月ごとで管理をすると入金月ごとに把握しやすくなるため、後から見返すときに必要な請求書を見つけやすくなります。
一方、取引先の数が多い場合は、月ごとではなく取引先別でファイリングしましょう。取引先ごとの請求管理ができるため、額の把握だけではなくオファーの増減なども把握しやすくなります。
データで管理する場合も、月ごとか取引先ごとでフォルダを分けて、その中に請求書を保管しましょう。
【月ごと】1-3. 【保存期間】適格請求書を発行した場合は控えを保存する
従来の請求書は、発行した側は控えの作成が義務ではありませんでした。ただ、入金の実態や流れを可視化するため、控えを作ることが習慣になっている方も多いかと思います。
しかし、インボイス制度に則って作成される「適格請求書」は、控えの作成・保存が義務となりました。従来の請求書も、控えを作成した場合は一定期間の保存が義務付けられます。
法人、個人事業主それぞれの保存期間は以下のとおりです。
【発行した請求書】保存期間 | ||
---|---|---|
法人 | 7年 | |
繰越欠損金額(※)がある場合は10年に延長 | ||
個人事業主 | 5年 | |
適格請求書の場合は7年 |
なお、請求書の保存期間とは、発行したタイミングから数えるのではありません。事業年度における確定申告の提出期限の翌日から起算するので間違えないよう注意しましょう。
事業年度が4月1日~3月31日で区切っている場合は、以下のようになります。
個人事業主も、確定申告の提出期限の翌日から5年です。個人事業主の場合は、一律3月16日から5年間、または7年間(適格請求書の場合)と覚えておきましょう。
2. 請求書の管理の仕方【受領した請求書の場合】
続いては、請求書を受領した側の管理方法を見ていきましょう。基本的な管理方法や手順は、発行した側とさほど変わりません。
2-1. 未支払い・支払い済みで分けて管理する
請求書を受領した場合は、未払い・支払い済みに分けて管理をすると、支払い忘れが起きにくくなります。
支払い遅れ・支払い忘れは取引先との信頼関係にも響くため、正しく管理してミスが起きないよう注意しましょう。
紙の場合とデータの場合、受領した請求書を管理する流れはそれぞれ以下のとおりです。
【紙の場合】発行側の管理と同じように、受領した請求書は支払い期限の順に管理すると支払い期限の超過を予防しやすくなります。また支払い済みのサインや印を押す際に、支払いを行った年月日も記入しておきましょう。
【データの場合】請求書を受領した場合の請求書管理も、基本的には発行した場合と同じです。フォルダによる請求書自体の管理と、一覧管理表によって未支払い・支払い済みのステータス管理を行います。
プルダウンでのステータス変更は、簡単に行える分、行を間違えやすい面があります。企業名や案件名をしっかり確認し、間違いのないよう管理していきましょう。
受領した請求書をスキャンして、データとして保存する方法もあります。この場合、電子帳簿保存法に定められている「スキャナ保存」の要件を満たす必要があるので注意しましょう。なお、正しくデータを保存できた場合、紙の請求書原本は破棄が可能です。
スキャナ保存に関する詳しい要件は、後述する「4. 適切な請求書管理をより効率的に行うなら専用ツールの導入がおすすめ」で触れているので、そちらもご確認ください。
2-2. 支払い済みの請求書は月ごと・請求元ごとで管理する
ここからは、支払い済みの請求書を管理する方法(保管する方法)について説明します。
支払い済みの請求書は、月ごと・請求元ごとで分けて管理すると、会計帳簿を確認しやすくなります。
月ごと、請求元ごとのどちらの管理方法でも問題ありませんが、取引先が数社など少ない場合は、月ごとでの管理がおすすめです。入金月ごとのお金の流れを把握しやすくなります。
一方、請求元ごとで分ける場合は、支払いの締め日や請求書の発行日順にファイリングしましょう。取引実績が一目で把握できるため、後から見返したときに便利です。
データで管理する場合は、フォルダを分けることで管理しやすくなります。
【月ごと】2-3. 【保存期間】法人は7年間、赤字が出た場合は10年間の保存が必要
受領した請求書は、一定期間の保存が義務付けられています。保存期間が2パターンあるため、しっかり確認しておきましょう。
- ・請求書の保存期間は原則7年
- ・繰越欠損金が生じた事業年度は10年
基本として覚えておくべき請求書の保存期間は7年です。7年を超えたら、紙の場合はシュレッダーにかけるなどして、内容が分からないようにしてから破棄しましょう。
ただ、企業によっては、保存分の請求書を他の会計帳簿などと併せて管理することもあります。
関係書類をまとめて管理する場合、請求書と異なり会計帳簿は10年の保存義務があるため、請求書だけ別個に管理をするのが面倒になるかもしれません。このような場合は、会計帳簿に定められた期間に合わせて保存は10年と決めてしまう方法もあります。
保存期間を過ぎた後の書類の破棄・保存は任意であるため、請求書に定められた保存期間を過ぎて所持していても、法律違反には当たりません。
2-4. 【保存期間】個人事業主は5年間の保存が必要
個人事業主の場合も、請求書を受領した場合は保存の必要があります。なお、個人事業主も請求書の保存期間が2パターン存在するため、自分が保存すべき期間が何年になるのかしっかり確認しておきましょう。
- ・請求書:青色・白色申告の別なく5年
- ・適格請求書:7年
個人事業主の場合、免税事業者か課税事業者かによって、請求書の保存期間がことなります。
また、2014年まで前年・前々年の事業所得が300万円以下の白色申告では、請求書の保存義務がありませんでした。しかし、法改正により現在では事業所得の過多に関係なく5年に統一されています。
ほそぼそと副業をしているだけだから、と軽く考えずしっかり請求書を保存しておきましょう。
3. 請求書を管理する主な方法
ここまでは基本的に紙やExcelによる請求書の管理の仕方を解説してきました。しかし、請求書の管理には、他にも専用ツールを使った方法もあります。
それぞれの管理方法別でみる特徴は以下のとおりです。
【紙・Excel・専用ツールの特徴】紙 | Excel | 専用ツール | |
---|---|---|---|
専門スキルが不要 | 〇 | △ | △ |
請求書の保存スペース | × | 〇 | 〇 |
導入のしやすさ | 〇 | 〇 | △ |
コスト | 〇 | △ | △ |
ヒューマンエラー | × | × | 〇 |
請求書管理の効率 | △ | △ | 〇 |
ここではこうした請求書管理の方法について、それぞれ見ていきましょう。
3-1. 紙ベースで管理
紙ベースでの請求書管理の特徴は、特別なスキルが必要ない点だといえます。専用のファイルへ順番に綴じていくだけなので、誰でも簡単に請求書の管理ができるでしょう。
一方、紙ベースの管理における課題は以下のとおりです。
- ・物理的な保存スペースが必要
- ・ファイリングに手間がかかる
- ・他の方法に比べてデータの検索性が低い
ペーパーレス化、データ化が叫ばれる昨今、紙ベースのみの請求書管理は限界が近づいているといえます。
3-2. Excelで管理
Excelを使って請求書を管理している企業も多い傾向にあります。ごく身近なツールであるExcelで管理するメリットは以下のようなものが挙げられます。
- ・身近なツールであるため導入のハードルが低い
- ・関数・マクロによってカスタマイズできる
一方、Excelの管理によって考えられる課題は以下になります。
- ・手入力が必要なためヒューマンエラーが起こりやすい
- ・データ入力に時間がかかる
Excelによる請求書管理は、紙ベースのように場所を取ることはありませんが、劇的に手間が省けるとはいえません。
3-3. 専用のツールで管理
請求書を始めとする書類管理の専用ツールの特徴は以下のとおりです。
- ・管理業務の一部を自動化できるため、大幅な業務効率向上が期待できる
- ・ヒューマンエラーが起こりにくい
- ・データの検索性が上がる
基本的に手入力が必要なくなるため、人的ミスの予防やタイムパフォーマンスの向上に期待が持てます。なお、専用ツールのデメリットには以下のようなものが挙げられます。
- ・初期費用やランニングコストなど別途費用が掛かる
- ・多機能なツールを選ぶと使いこなせない恐れ
費用感のすり合わせや使いこなすためのスキルが必要になるため、導入前の下調べが大切です。
4. 適切な請求書管理をより効率的に行うなら専用ツールの導入がおすすめ
ここまで触れてきたように、従来から利用されてきた紙やExcelを使った方法でも請求書の管理は可能です。
長年、請求書を紙ベースで管理してきた方であれば、急に他の方法に移行しようとしても戸惑う方も多いでしょう。
しかし、ペーパーレス化・DXが叫ばれる昨今、請求書管理のデータ化は避けられません。
このため紙での管理は、できるだけ脱却していくべきといえるでしょう。
Excelで管理する場合は、請求書そのものはデータとして保存されているため、データ化という面ではクリアできています。
ただ、電子帳簿保存法の法的要件にのっとり、適切なデータ管理を行うにはExcelでは課題が出やすいことも事実です。以下、データ保存に関わる電子帳簿保存法の法的要件をいくつか見てみましょう。
電子データの保存に関する要件 |
---|
システムの概要、取扱説明書など関係書類を備え付ける(自社開発のシステムに限る) |
見読性の確保 |
検索性の確保 |
下記のいずれかの措置を行う ・タイムスタンプが付された後に受け取る ・データを受け取った後速やかにタイムスタンプを付す ・データの訂正削除ができない、または訂正削除の記録が残るシステムを使う ・訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け |
Excelでは、電子データの保存に関する要件のうち、「データの訂正削除ができない、または訂正削除の記録が残るシステムを使う」の部分が難しくなります。
また、大容量の請求書を扱う場合は、Excelの検索機能では力足らずです。
こういったことから、電子帳簿保存法に則った請求書管理を効率的に行うためには、専用ツールに頼ることをおすすめします。
専用ツールは一般的に以下のような機能を備えており、電子帳簿保存法の要件を満たしつつ、効率的に請求書の管理を行えるからです。
- ・書類の登録機能
- ・OCR機能(紙やPDFに記載された内容を読み取り、テキストデータ化できる機能)
- ・タイムスタンプ
- ・高い検索機能
- ・保存期間が超過した帳票・書類の自動削除
専用ツールを利用することで、Excelでは対応が難しい
- ・データの訂正削除ができない、または訂正削除の記録が残るシステムを使う
- ・検索性の確保
といった電子帳簿保存法の要件も十分に満たすことができます。
さらに、必要な請求書を探したり処分したりする手間が削減され、請求書管理に割いていた時間を他の業務に回せるようになるでしょう。
こういったことから、電子帳簿保存法に則った、より適切な請求書管理を効率的に行うなら、専用ツールの導入がおすすめなのです。
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5. まとめ
本記事では請求書管理について、基本的な管理の仕方から3つの管理手法まで解説いたしました。どのように管理をしていくべきか、判断しやすくなったのではないでしょうか。
請求書管理の方法は、主に以下3つの方法になります。
- ・紙ベース
- ・Excel
- ・専用ツール
上記3つのどの方法を用いても、請求書の管理は可能だといえます。しかし、将来においてデータによる請求書管理を考えているのであれば、おすすめは専用ツールの導入です。
なぜなら紙ベース・Excel共に、電子帳簿保存法の法的要件を満たすことが難しいからです。法的要件を満たせないままでは、電子帳簿保存法違反を犯してしまうことも考えられます。
便利なツールを積極的に用いて、業務効率アップはもちろん、請求書の安全な管理を目指してみましょう。